ベクトルの内積

ベクトルの内積

 今回はベクトル同士の掛け算です。ベクトルの掛け算には、内積と外積の 2 種類がありますが、今回は内積について考えます。内積の計算方法は特に難しくありませんが、「ベクトルの向きを揃えて掛ける」と考えるとイメージしやすいかと思います。機械学習の分野で頻繁に登場する概念なので、定義と実装方法についてマスターしておきましょう。外積については少し先の講座[09]で解説します
 

内積の定義と性質

 ベクトルの 内積 (inner product) は要素同士の積の総和として定義されます。

 たとえば、$\boldsymbol{v}=\begin{bmatrix}2\\3\end{bmatrix}$ と $\boldsymbol{w}=\begin{bmatrix}5\\1\end{bmatrix}$ の内積は
 
\[\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}=\begin{bmatrix}2\\3\end{bmatrix}
\cdot\begin{bmatrix}5\\1\end{bmatrix}=2\times 5+3\times 1=13\tag{1}\]
のように計算できます。3 次元以上も同様で、一般に $n$ 次元ベクトル同士の内積は
 
\[\begin{align*}\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}=&\begin{bmatrix}v_1\\v_2\\\vdots\\v_n\end{bmatrix}
\cdot\begin{bmatrix}w_1\\w_2\\\vdots\\w_n\end{bmatrix}\\[6pt]=&v_1\cdot w_1+v_2 \cdot w_2+\ \cdots\ +v_n\cdot w_n\end{align*}\tag{2}\]
と定義されます。ベクトル $\boldsymbol{v}$ の自身との内積、すなわち $\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{v}$ は ベクトルの大きさ(ノルム)に等しくなっています:
 
\[\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{v}=v_1^2+v_2^2+\ \cdots\ +v_n^2=\parallel\boldsymbol{v}\parallel^2\tag{3}\]
 すなわち、ベクトル $\boldsymbol{v}$ の大きさは内積を使って
 
\[\parallel\boldsymbol{v}\parallel=\sqrt{\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{v}}\tag{4}\]
のように表せます。

 内積演算においては、交換法則、結合法則、分配法則が成り立ちます。
\[\begin{align*}&\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}=\boldsymbol{w}\cdot\boldsymbol{v}\tag{5}\\[6pt]
&c(\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w})=(c\boldsymbol{v})\cdot\boldsymbol{w}\tag{6}\\[6pt]
&(\boldsymbol{u}+\boldsymbol{v})\cdot\boldsymbol{w}
=\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{w}+\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}\tag{7}\end{align*}\]
 もう少し先の記事で行列について学ぶことになりますが、ベクトル $\boldsymbol{v},\ \boldsymbol{w}$ を $1$ 列の行列と考えて、内積を $\boldsymbol{v}^T\boldsymbol{w}$ と表記することもできます。$\boldsymbol{v}^T$ は $\boldsymbol{v}$ を転置して要素を横に並べた行ベクトルです。
 
\[\boldsymbol{v}^T=\begin{bmatrix}v_1&v_2&...&v_n\end{bmatrix}\tag{8}\]
 行列表記と整合性がとれるので、講座の後半では行ベクトルによる表記が増えると思います。行ベクトルを $\boldsymbol{v}=(v_1,\ v_2,\ ...)$ と混同しないように注意してください。$()$ で括ってカンマで区切るベクトルは、普段使っている列ベクトルを便宜上横書きにしているだけです。
 

numpy.dot()

 numpy.dot(a, b) は行列積を計算する関数です。a, b に 1 次元配列(ベクトル)をわたせば内積を返します (1 列の行列同士の積はベクトルの内積と同じです)。

# numpy_inner_product_1

# In[1]

import numpy as np

# ベクトルv=[3 2 6]
v = np.array([3, 2, 6])

# ベクトルw=[4 7 2]
w = np.array([4, 7, 2])

# vとwの内積を計算
ip = np.dot(v, w)

print(ip)
38

 

ndarray.dot()

 配列 (ndarrayオブジェクト) には内積を計算する dot() メソッドがあります。

# In[2]

# ベクトルv=[3 2 6]
v = np.array([3, 2, 6])

# ベクトルw=[4 7 2]
w = np.array([4, 7, 2])

# vとwの内積を計算
ip = v.dot(w)

print(ip)
38

 

numpy.vdot()

 numpy.vdot(a, b) にベクトル (1 次元配列) を渡して内積を計算することができます。

# numpy_inner_product_2

# In[1]

import numpy as np

# ベクトルv=[7+2i 3+i]
v = np.array([7 + 2j, 3 + 1j])

# ベクトルw=[4+5i 8]
w = np.array([4 + 5j, 8])

# vとwの内積を計算
ip = np.dot(v, w)

print(ip)
42+51j

 numpy.vdot() の引数 a, b に 2 次元以上の配列を渡すと、1 次元配列に平坦化してから内積を計算します(テンソル複内積)。

# In[2]

# 行列a
a = np.array([[1, 4],
              [3, 5]])

# 行列b
b = np.array([[3, 7],
              [4, 9]])

# 1*3+4*7+3*4+5*9
ip = np.vdot(a, b)

print(ip)
88

 

numpy.inner()

 numpy.inner(a, b) にベクトル (1 次元配列) を渡して内積を計算することができます。

# numpy_inner_product_3

# In[1]

import numpy as np

# ベクトルv=[2 5 0]
v = np.array([2, 5, 0])

# ベクトルw=[3 1 4]
w = np.array([3, 1, 4])

# vとwの内積を計算
ip = np.inner(v, w)

print(ip)
11

 引数 a, b に行列を渡すと、a と b.T の行列積を返します (b.T は b の転置行列)。すなわち、np.dot(a, b.T) と同じ結果を返します。
 

まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数 (BERET SCIENCE)

新品価格
¥3,410から
(2019/10/24 15:48時点)

内積の幾何学的意味

 ベクトル $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ のなす角を $\theta$ とすると、二つのベクトルの内積は
 
\[\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}=\parallel\boldsymbol{v}\parallel\parallel
\boldsymbol{w}\parallel\cos\theta\tag{10}\]
と表されます。この定義は (1) と同値であり(余弦定理を使って証明できます)、幾何学的には下図のように $\boldsymbol{v}$ の射影と $\boldsymbol{w}$ の長さの積を意味します。

 ベクトルの内積 (dot product)

 2 つのベクトルのなす角度が直角であるとき、射影がなくなるので内積は $0$ になることがわかります(下図)。

 直交するベクトルの内積はゼロ

 たとえば、$\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ と $\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}$ は互いに直交するので内積は $0$ です。

 また、式 (6) より、ベクトル $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ の間の角度の余弦 (cosine) は
 
\[\cos\theta=\frac{\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}}{\parallel\boldsymbol{w}\parallel\parallel\boldsymbol{v}\parallel}\tag{11}\]
となるので、$\cos$ の逆関数 $\mathrm{Arccos}$ を使うと、
 
\[\theta=\mathrm{Arccos}\left(\frac{\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}}{\parallel\boldsymbol{v}\parallel\parallel\boldsymbol{w}\parallel}\right)\tag{12}\]
によって角度を計算できます。4 次元以上のベクトルのなす角度も(想像するのは難しいですが)、(2) で定義できます。Python で角度を求める関数を実装してみましょう。

# python_vector_angle

# In[1]

import numpy as np

# 2つのベクトルのなす角度を求める関数
def v_angle(v1, v2, deg = False):

    # v1とv2の大きさ(ノルム)を計算
    v1_n = np.linalg.norm(v1)
    v2_n = np.linalg.norm(v2)

    # v1とv2の内積を計算
    v1_dot_v2 = np.dot(v1, v2)

    # 角度の余弦を計算
    cos_theta = v1_dot_v2 / (v1_n * v2_n)

    # 逆三角関数を使って角度を計算
    theta = np.arccos(cos_theta)

    # 引数degがTrueならば、角度を度数単位(degree)に変換
    if deg == True:
        theta = np.degrees(theta)

    return theta

 deg は結果を度数法単位 (deg) とラジアン (rad) のどちらで返すか決定するオプション引数です。デフォルトでは False に設定されているので、この引数を省略するとラジアンで返してきます。

 v_angle() を使って、$\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ と $\begin{bmatrix}1\\\sqrt{3}\end{bmatrix}$ の間の角度を求めてみましょう。

 deg は True に設定して結果を度数単位で返すようにします。

# In[2]

# ベクトルを定義
v = np.array([1, 0])
w = np.array([1, np.sqrt(3)])

# vとwの間の角度を計算
theta = v_angle(v, w, deg = True)

print("θ = {:.3f}".format(theta))
θ = 60.000