≪【前の記事】ユニタリ行列 ケーリー・ハミルトンの定理 「固有値と固有ベクトル」で学んだように、行列 $A$ の固有値 $\lambda$ は固有方程式 \[\det(A-\lambda I)=0\tag{1}\] を解いて得られました。左辺は固有多項式とよばれる式で、$p(\lambda)$ のように表されます。行列 $A$ が二次正方行列であるとき、 \[A=\begin{bmatrix}a&c\\b&d\end{bmatrix}\tag{2}\] とおいて、$p(\lambda)$ の具体的な表式を書き表してみると、 \[\begin{align*}p(\lamb […]
≪【前の記事】力学的エネルギー保存の法則 オイラー法 与えられた微分方程式について、通常の数学的手法を使って導き出された解を解析解 (厳密解) とよびます。これまでの記事では、運動方程式の解析解を手計算で求めてからデータを作成して、結果をグラフにプロットしました。 解析解は文句なしに最高精度を保証するので、一番最初に検討すべき選択肢です (与えられた微分方程式が解けるのかどうか判断に迷ったときは、SymPy に解かせてみてください)。 しかし、現実に近い状況を想定して運動方程式の右辺に色々な項が付け加えられるようになると、解析解を求めることが非常に難しくなってきま […]
力学的エネルギー保存の法則 ≪【前の記事】自由落下運動 今回の記事では エネルギー とよばれる量を導入します。 エネルギーに関する詳細な議論は先の記事で扱いますが、当面の間は運動エネルギーと位置エネルギーの定義式を天下り的に使いながら、数値シミュレーションを通してその性質を探っていきます。 運動エネルギーと位置エネルギー 質量 $m$ [kg] をもち、速度 $v$ [m/s] で運動する物体の 運動エネルギー は \[K=\frac{1}{2}mv^2\tag{1}\] で与えられます。また、物体が置かれた天体 (惑星または衛星) の表面付近における重力加速度が $g$ […]
自由落下運動 ≪ [前の記事] 万有引力の法則と重力加速度 物体に重力のみが作用して生じる運動を 自由落下運動 (free fall) とよびます。 地球上での落下運動も自由落下とよぶことがありますが、空気抵抗を受けるので、厳密には自由落下ではありません。 おそらく、自由落下は力学で最も初歩的な問題であり、高校の物理学の教科書でも取り上げられますが、特殊な環境 (真空) で観測される現象であることに注意してください。自由落下の方程式を解いて得られる速度やエネルギーの値は、日常で観察する落下運動とは大きく異なります。 自由落下の運動方程式 次のような状況を想像してみましょ […]
ポアソン分布 この記事の内容 (ポアソン分布) は二項分布の知識を前提とするので、簡単に復習しておきます (二項分布の詳細についてはこちらの記事を参照してください)。 $2$ 種類の事象 $A$ と $B$ が、それぞれ確率 $p,\ 1-p$ で起こる試行を $n$ 回繰り返すとき、$A$ が $k$ 回起こる確率は \[f(k)=P(X=k)={}_{n}\mathrm{C}_{k}\,p^{k}(1-p)^{n-k}\tag{1}\] で与えられます。この式を使うと、コインを $10$ 枚投げて表が $3$ 枚出る確率などを計算できます。 しかし、$n$ に比べて $p$ […]
二項分布 二項分布 (Binomial Distribution) とは、結果が二択となる試行を繰り返して、ある事象 (出来事) がどのくらい発生するかを表す確率分布です。たとえば、引き分けのない試合が $10$ 回行われたとき、$7$ 勝できる確率はどのくらいかを表します。 二項試行のシミュレーション これから「コインを $5$ 回投げて、それぞれの回で表と裏のどちらが出たかを記録する試行」を $1$ セットとする実験を $1000$ セット行なうことにします。ただし、実際にコインを投げるのではなく、乱数生成関数によるシミュレーション (仮想実験) です。 最初に準備として必要なモ […]
最頻値 (モード) ある標本の中で最も頻繁に現れる値を 最頻値 (モード) といいます。たとえば [1, 2, 5, 5, 5, 8, 8, 12, 19] においては要素 5 が最も多く含まれているので、最頻値は 5 となります。Python では statistics.mode() を使って標本の最頻値を取得できます。 # PYTHON_STATISTICS_MODE # In[1] import statistics x = [1, 2, 5, 5, 5, 8, 8, 12, 19] # xの最頻値 mode_x = statistics.mode(x) print("xの最 […]
中央値 (メジアン) データを昇順 (小さい順) あるいは降順 (大きい順) に並べたときに真ん中にくる値を 中央値 (メジアン) と定義します。たとえば、昇順に並んだ 9 個のデータ 1, 3, 7, 10, 13, 15, 19, 23, 28 の中央値は、左から (あるいは右から) 数えて 5 番目にある 13 です。 データが偶数個のときは真ん中にある 2 数の平均値を中央値とします。たとえば、10 個のデータ 5, 9, 13, 21, 40, 46, 55, 69, 71, 98 の真ん中には $40$ と $46$ の値があるので、その平均をとって […]
分散と標準偏差、偏差値 この記事ではデータのバラつき具合を表す分散と標準偏差、そして偏差値について解説します。最初に必要なモジュールをまとめてインポートして、numpy.set_printoptions() で表示形式を設定しておきます。 # math_score # In[1] # モジュールをインポート import numpy as np import matplotlib.pyplot as plt from scipy.stats import zscore # 要素は小数点以下3桁まで表示 # 10要素を超える配列は省略表示 # 省略する場合は先頭と末尾に5要素を表示 np.se […]
≪【前の記事】エルミート行列 ユニタリ行列 実空間 $\mathbb{R}^n$ の 直交行列 $Q$ は、複素空間 $\mathbb{C}^n$ において ユニタリ行列 $U$ として拡張定義されます。ユニタリ行列は \[U^{\dagger}U=UU^{\dagger}=I\tag{1}\] を満たす正方行列です。$U$ が実行列であれば $U^{\dagger}=U^T$ なので、(1) は直交行列 $Q$ の定義を包含します。たとえば、前回記事で扱ったエルミート行列 \[H=\begin{bmatrix}2&1-i\\1+i&3\end{bmatrix}\ta […]