【線型代数10】ベクトルの線形結合
ベクトル $\boldsymbol{v},\ \boldsymbol{w}$ について、それぞれに任意の実数 $p,\ q$ を掛けて加えたベクトル $\boldsymbol{r}$ を $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ の 線形結合 (linear combination) とよびます。
\[\boldsymbol{r}=p\boldsymbol{v}+q\boldsymbol{w}\tag{1}\]
$\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ が互いに平行でない 2 次元ベクトルであれば、$p$ と $q$ はすべての実数を動くので、$\boldsymbol{r}$ は平面上のすべての点を表します。このとき $p$ と $q$ は、下図にあるような斜交座標系上の点とみなすことができます。
ベクトル $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ は、この座標系の 基底 とよばれます。
この定義にしたがうと、普段よく使っているデカルト座標系(直交座標系)は、
$\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ と $\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}$ を基底とする座標系です。
ベクトル $\boldsymbol{v}$ と $ \boldsymbol{w}$ が平行であるとき、すなわち $\boldsymbol{w}=k\boldsymbol{v}$ と表せるとき、線形結合は
\[\boldsymbol{r}=p\boldsymbol{v}+q\boldsymbol{w}=p\boldsymbol{v}+qk\boldsymbol{v}=(p+qk)\boldsymbol{v}\]
となります。これはベクトルのスカラー倍であり、1 本の直線を表す式なので平面を作ることはできません。
【線型代数11】線型独立と線型従属
$n$ 個のベクトルの集合 $\{\boldsymbol{v}_1,\ \boldsymbol{v}_2,\ \cdots,\ \boldsymbol{v}_n\}$ が与えられたとします。
この集合から任意のベクトル $\boldsymbol{v}_k$ を選んだとき、残りすべてのベクトルの線型結合で表すことができなければ $\{\boldsymbol{v}_1,\ \boldsymbol{v}_2,\ \cdots,\ \boldsymbol{v}_n\}$ は互いに 線型独立 であるといいます。
逆に集合に含まれるいずれか1つのベクトルが残りのベクトルの線型結合として表すことができるのならば、$\{\boldsymbol{v}_1,\ \boldsymbol{v}_2,\ \cdots,\ \boldsymbol{v}_n\}$ は互いに 線型従属 であるといいます。
最も簡単な例として、2 つのベクトルだけで構成される集合
\[U=\left\{\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}, \quad \begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}\right\}\]
を考えます。$\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ を定数倍して $\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}$ をつくることはできないし、$\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}$ を定数倍して $\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ をつくることもできません。
したがって、$\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ と $\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}$ は互いに線型独立です。
次は上の集合 $U$ に $\begin{bmatrix}3\\3\end{bmatrix}$ を加えてみます。
\[V=\left\{\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix},\quad \begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix},\quad \begin{bmatrix}3\\3\end{bmatrix}\right\}\]
$\begin{bmatrix}3\\3\end{bmatrix}$ と $\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}$ は平行ではないし、$\begin{bmatrix}3\\3\end{bmatrix}$ と $\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}$ も平行ではありませんが、
\[\begin{bmatrix}3\\3\end{bmatrix}=3\begin{bmatrix}1\\0\end{bmatrix}+3\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}\]
のように他の 2 本のベクトルの線型結合で表されるので、集合 $V$ の各ベクトルは互いに線型従属の関係にあります。2 次元空間 (平面) では 2 本の互いに独立なベクトルで全平面を張れるので、3 本以上のベクトルで構成される集合は必ず線型従属となります。
2 つの 2 次元ベクトルの間で成り立つ線型独立と線型従属を表す公式を導いておきます。
$\boldsymbol{v}=\begin{bmatrix}v_1\\v_2\end{bmatrix}$ と $ \boldsymbol{w}=\begin{bmatrix}w_1\\w_2\end{bmatrix}$ が 線型従属であるときは、
\[\begin{bmatrix}w_1\\w_2\end{bmatrix}=k\begin{bmatrix}v_1\\v_2\end{bmatrix}\]
と表せるので、
\[v_1w_2-v_2w_1=kv_1v_2-kv_2v_1=0\]
が成り立ちます。ベクトルが線型独立であるときには、
\[v_1w_2-v_2w_1\neq 0\]
となります。証明は省略しますが、この逆も成り立ちます。すなわち、$v_1w_2-v_2w_1=0$ であれば $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ は線型従属であり、$v_1w_2-v_2w_1\neq 0$ であれば $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ は線型独立です。
【ChatGPT講義】線形独立の意味
線形独立(せんけいどくりつ、linear independence)とは、ベクトルや関数の集合が、どれか1つ以上のベクトルや関数を他のベクトルや関数の線形結合(スカラー倍と和の組み合わせ)で表現することができない状態を指します。具体的に説明すると、ベクトルの場合、ベクトルの集合 {v₁, v₂, …, vₙ} が線形独立であるとは、以下の条件を満たすことを意味します:
1. どのベクトルもゼロベクトルではない:v₁, v₂, …, vₙ ≠ 0
2. どのベクトルも他のベクトルの線形結合で表現できない:a₁v₁ + a₂v₂ + … + aₙvₙ = 0 のとき、a₁ = a₂ = … = aₙ = 0
つまり、ベクトルの集合が線形独立である場合、その集合内のどのベクトルも他のベクトルのスカラー倍と和で表現することができず、それぞれが互いに独立して存在していると言えます。同様に、関数の場合も同様の考え方が適用されます。関数の集合が線形独立であるとは、それぞれの関数が他の関数の線形結合で表現されない状態を指します。線形独立性は、線形代数やベクトル空間の理論において重要な概念であり、多くの応用があります。例えば、連立方程式の解やベクトル空間の基底の特定、行列の固有ベクトルの計算など、さまざまな数学的な問題や応用で線形独立性が活用されます。
【ChatGPT講義】線形従属の意味
線形従属(せんけいじゅうぞく、linear dependence)とは、ベクトルや関数の集合が、他のベクトルや関数の線形結合(スカラー倍と和の組み合わせ)によって表現可能な状態を指します。つまり、あるベクトルや関数が他の要素の組み合わせで表現できる場合、その集合は線形従属であると言います。具体的に説明すると、ベクトルの場合、ベクトルの集合 {v₁, v₂, …, vₙ} が線形従属であるとは、以下の条件を満たすことを意味します:
1. どれか1つ以上のベクトルが他のベクトルの線形結合で表現可能である:v₁, v₂, …, vₙ のうち、あるベクトル vₖ が他のベクトルのスカラー倍と和の組み合わせで表される
これは、少なくとも1つのベクトルが他のベクトルによって生成される「冗長な情報」を含んでいることを示しています。線形従属なベクトルの集合では、ベクトルの一部は他のベクトルのスケール倍と和によって表現できるため、冗長で重複した情報が存在します。同様に、関数の場合も同様の考え方が適用されます。関数の集合 {f₁(x), f₂(x), …, fₙ(x)} が線形従属である場合、ある関数が他の関数の線形結合として表現できることを意味します。線形従属性は、ベクトルや関数の集合が互いに依存し、冗長な情報を持つ状態を表します。このような状態では、集合内の要素が互いに独立していないため、情報の重複や冗長さが生じます。線形従属性は、線形代数やベクトル空間の理論において重要な概念であり、ベクトルや関数の性質や解析、データ処理などの応用においても重要な役割を果たします。