【線型代数08】コーシー・シュワルツの不等式
角度による内積の定義を再掲します。
\[\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}=\parallel\boldsymbol{v}\parallel\parallel\boldsymbol{w}\parallel\cos\theta\tag{1}\]
右辺の $\cos\theta$ は $-1$ から $1$ の値に制限されるので、内積の絶対値について次の不等式が成り立ちます。
\[|\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}|\ \leq\ \parallel\boldsymbol{v}\parallel\parallel\boldsymbol{w}\parallel\tag{2}\]
この式を コーシー・シュワルツの不等式 (Cauchy–Schwarz inequality) とよびます。等号は $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ が互いに平行のとき(互いに同じ方向または逆向きであるとき)に成立します(下図)。
ベクトル $\boldsymbol{v}=\begin{bmatrix}2\\3\end{bmatrix}$ と $\boldsymbol{w}=\begin{bmatrix}2\\5\end{bmatrix}$ について、コーシー・シュワルツの不等式が成り立つことを確認してみます。
# python_cauchy_schwarz_inequality
# In[1]
import numpy as np
from scipy.linalg import norm
# ベクトルを定義
v = np.array([2, 3])
w = np.array([2, 5])
# |v・w|を計算
a = np.abs(np.dot(v, w))
# |v||w|を計算
b = norm(v) * norm(w)
# |v||w|-|v・w|
print("|v||w|-|v・w| : {:.3f}".format(b - a))
# |v||w|-|v・w| : 0.416
【線型代数09】三角不等式
内積の定義式 (1) とコーシー・シュワルツの不等式 (2) を使うと、2 つのベクトルの和についての評価式を得ることができます。
\[\parallel\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}\parallel\ \leq\ \parallel\boldsymbol{v}\parallel+\parallel\boldsymbol{w}\parallel\tag{3}\]
これは 三角不等式 (triangle inequality) とよばれる有名な式で、三角形の 2 辺の長さの和が他の 1 辺の長さより大きいことを表しています(ほとんど自明の事実です)。
等号は $\boldsymbol{v}$ と $\boldsymbol{w}$ が平行のとき(つまり三角形がつぶれて直線になるとき)に成立します。三角不等式の証明は簡単です:
\[\begin{align*}\parallel\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}\parallel ^2&=\parallel\boldsymbol{v}\parallel ^2+2\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{w}+\parallel\boldsymbol{w}\parallel^2\\[6pt]&\ \leq\ \parallel\boldsymbol{v}\parallel^2+2\parallel\boldsymbol{v}\parallel\parallel\boldsymbol{w}\parallel+\parallel\boldsymbol{w}\parallel^2\\[6pt]&\ =\ (\parallel\boldsymbol{v}\parallel+\parallel\boldsymbol{w}\parallel)^2\end{align*}\]
先ほどと同じベクトル $\boldsymbol{v}=\begin{bmatrix}2\\3\end{bmatrix}$ と $\boldsymbol{w}=\begin{bmatrix}2\\5\end{bmatrix}$ について、三角不等式が成り立つことを確認しておきます。
# python_triangle_inequality
# In[1]
import numpy as np
from scipy.linalg import norm
# ベクトルを定義
v = np.array([2, 3])
w = np.array([2, 5])
# |v+w|を計算
a = norm(v + w)
# |v|+|w|を計算
b = norm(v) + norm(w)
# |v|+|w|-|v+w|
print("|v|+|w|-|v+w| : {:.3f}".format(b - a))
# |v|+|w|-|v+w| : 0.046
「三角形の一番長い辺が他の二辺の和よりも長いこと」とありますが、逆ではないでしょうか?2辺の和のほうが長い、が正解ではないでしょうか。
申し訳ありませんでした。御指摘の通りです。
記事は訂正しておきました。
サイトの記事のすべてを一人ではチェックできないので、ミスを指摘していただけると本当に助かります。今後もよろしくお願いします。
【ChatGPT講義】コーシー・シュワルツの不等式
コーシー・シュワルツの不等式は、ベクトルや関数の内積(または積分)の大きさに関する重要な不等式です。この不等式は、19世紀の数学者であるオーギュスタン・ルイ・コーシーとカール・シュワルツによって独立に発見されました。コーシー・シュワルツの不等式は、次のように表現されます:
|A・B| ≤ ||A|| × ||B||
ここで、AとBはベクトルまたは関数であり、||A||と||B||はそれぞれAとBの大きさ(またはノルム)を表します。言葉で説明すると、ベクトル(または関数)AとBの内積の絶対値(または積分の絶対値)は、ベクトル(または関数)AとBの大きさ(またはノルム)の積よりも小さくなります。この不等式は、数学や物理学などのさまざまな分野で広く応用されています。特に、ベクトルや関数の正規化、相関係数、確率論、信号処理、フーリエ解析などで重要な役割を果たしています。例えば、ベクトルAとBが互いに直交している場合、つまりA・B = 0の場合、コーシー・シュワルツの不等式は等号となります。また、ベクトルAとBが平行な場合、つまりAとBが同じ方向または逆方向を向いている場合、不等式の等号はベクトルAとBの大きさが同じであるときに成り立ちます。
【ChatGPT講義】三角不等式(三角形の2辺の長さの和は残りの1辺の長さよりも大きいのです)
三角不等式は、数学の基本的な不等式の1つであり、三角形の辺の長さに関する性質を表します。三角不等式は、ベクトルや実数の絶対値にも適用されます。以下で、三角不等式について詳しく説明します。
1. 三角形の場合の三角不等式:
三角形の場合、三角形の任意の2辺の長さの和は、残りの1辺の長さよりも必ず大きくなります。具体的には、三角形の辺の長さをa、b、cとすると、以下の不等式が成り立ちます:
a + b > c
b + c > a
c + a > b
これは、三角形の辺の長さの性質を表しています。もし、この不等式が成り立たない場合、つまり、2辺の長さの和が残りの1辺の長さ以下になる場合、その3辺では三角形を作ることができません。
2. ベクトルの場合の三角不等式:
ベクトルの場合、ベクトルの大きさ(ノルム)に対しても三角不等式が成り立ちます。具体的には、ベクトルaとベクトルbの場合、以下の不等式が成り立ちます:
||a + b|| ≤ ||a|| + ||b||
ここで、||a||はベクトルaの大きさ(ノルム)を表します。この不等式は、ベクトルの大きさの性質を表しています。ベクトルの和の大きさは、それぞれのベクトルの大きさの和よりも小さくなります。
3. 実数の場合の三角不等式:
実数の場合、絶対値に対しても三角不等式が成り立ちます。具体的には、実数aと実数bの場合、以下の不等式が成り立ちます:
|a + b| ≤ |a| + |b|
これは、実数の絶対値の性質を表しています。実数の和の絶対値は、それぞれの実数の絶対値の和よりも小さくなります。